基調講演「JAPAN FASHON 〜その構造と動向〜」
日時 2014年5月17日(土) 15:00〜16:30
講師 山内 誠
一般財団法人日本ファッション協会 企画事業部 部長
場所 京都私学会館 会議室
テーマ 「JAPAN FASHON 〜その構造と動向〜」
今回の基調講演の講師には、山内 誠氏にご登場いただきました。東レに入社し、流行色の選定・発行、トレンド誌の編集発行、色彩と販売企画業務などに従事された。2003年から日本ファッション協会に移られ2008年には同協会流行色情報センター所長。2011年度より同協会企画事業部部長を務められています。当 日本テキスタイルデザイン協会においても理事として活躍されています。
FASHONは今を着る事、ファッション産業は今を売る事と定義し、JAPANFASHONを多方面からの見解と分析で解きほぐしていかれた。沢山のスライド資料と軽快でユーモアのある語り口に、時間がたつのも忘れどんどん引き込まれていった。
日本と欧米のファッションは基本的に成り立ちが違っている。日本のファッションは若者がリードしている。ストリートを中心にした昼の服であり当然カジュアルであり、好き嫌いで着る。欧米はコレクションのファッションショーで見られるように、大人が夜の服として着るフォーマルがファッションのベースでルールが尊重される。
日本人とチベットの人のDNAは、世界各国で調べられたDNAのマップを見ると、孤立した異質なDNAであることが分かる。日本は東の果てに流れ着いた多民族で、日本以外の異なる文化に対して寛容であるらしい。食文化を見ると明白で、日本は世界の料理を全て受け入れて楽しんでいる。また日本人は“うつ“を抑制する神経伝達物質のセロトニンの生産が少なく、不安遺伝子が作用してネガティブな情報に敏感だったりするが、それと同時に空気を読む能力に長けている。他人が気分を害したことが察知でき、人間関係に気を配る。
日本と西洋の違いはあらゆる所で見られ、農耕文化と牧畜文化、稲作の協同作業と家畜の管理、多神教と一神教、自然崇拝と理性の絶対視、子どもは神と子どもは不完全、そして おだやかな全体主義の中の自由社会の若者のファッションと個人主義的社会を背景にした階級社会の大人のファッション。
日本人の特性は、うつろい変化することに親しみを感じ、文字には図像と音声で対応し、虫の音は言語脳で捉え、日本建築は視覚を優位に建てられた、など様々な事例をあげていき、歴史的にみても日本は、江戸時代に現代で言うスタイルブック、メディア、ポスター、ブランドが存在しており、すでにファッション大国であった。そして戦後から現在に向かうファッションの変遷が順を追って紹介され、バックグランドとなる社会の変遷と関連づけられていった。
2000年代になると、未来の喪失を埋める気分のファッション、存在の証、生きる糧としてのファッションとなり、2010年代は「個性」から「なりたい自分」へ、最高の自分を作る時代になる。「なりたい自分」は衣服のコーデに収まらず整形、メーク、画像処理などに広がりをみせ身体も変容していく。テレビタレントのマツコを例にあげ、素顔の顔とコマーシャルの化粧顔の写真を対比していて、分かり易くクスッと笑えた。
自己完結型の主体性のあるデザイナーの時代は終わり、受け手側が表現者に作品を作らせる時代になった。今までの概念は意味がなくなり、ファッション産業の形は崩壊しその先に何があるのか。
「これからのファッションとは? テキスタイルの未来は? 皆さんで考えてください。」
最後に山内氏から会場の皆さんに大きな問いが投げかけられ、この講演が終了した。
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